日本大学経済学部 三井秀俊教授 

経済学の複雑な世界を、深い洞察とわかりやすい言葉で解き明かす日本大学経済学部の三井秀俊教授。長年にわたる研究と実践的な教育手法により、次世代の経済学者たちに大きな影響を与えてきました。

本日は、その豊かな知識と経済に対する独自の視点を持つ三井教授に、現代経済の動向と未来への洞察について語っていただきます。

インタビューを受けていただいた人

日本大学経済学部 三井秀俊教授

東京都立大学助手、日本大学経済学部専任講師・助教授・准教授を経て、2015年より同大学経済学部教授。この間、千葉大学大学院・一橋大学大学院・筑波大学大学院・埼玉大学大学院・上智大学大学院・電気通信大学・東洋大学非常勤講師、埼玉大学大学院客員准教授・客員教授、日本大学経済学部経済科学研究所長、デューク大学客員研究員などを歴任、 博士(経済学)

目次

ご自身について、ご経歴や現在の職位、研究に至った動機などを簡潔にご紹介いただけますでしょうか。

現在は、日本大学経済学部の教授です。主に、証券市場論と金融工学の授業を担当しています。同時に、同大学大学院経済学研究科の博士前期・後期課程でも教えています。

役職は、大学院担当 (大学院委員会委員長) と研究者育成員会委員長をしています。また、埼玉大学大学院で客員教授もしています。これまで、他大学の大学院で20年以上非常勤講師をしてきました。

証券・金融の分析を数学・統計学・計量経済学により行なうことを主に研究してきました。

経済学を専攻するに至った経緯や、その分野に魅かれた理由についてお聞かせください。

金融の分野に非常に興味があり、経済学を専攻することにしました。もともと数学は得意だったので、経済学で使用する数学にアレルギー等はなかったです。

学部のゼミでは、経済理論とポートフォリオを勉強しました。数学・統計学を多用してポートフォリオ理論を勉強するのは、非常に興味深いものでした。高校・大学の教養課程で学んだ数学・統計学が、株式投資に役に立つなど当初は思いもよらず、科学的に分析を行なうことに驚きました。

大学院へ進学し、デリバティブを専門に勉強した時も同じように感じました。大学院では、理論だけでなく、現実の金融データを用いて分析していくわけですが、これが大変面白かったです。

現在取り組んでいる研究テーマや、その主な成果についてご説明いただけますでしょうか。

株式市場・外国為替市場における時系列分析を主に研究しています。

個別株式や株価指数先物・株価指数オプション・通貨先物・通貨オプションなどのデリバティブに関して広く応用することが可能となることを想定して、Stochastic Volatility model (SV model; 確率的分散変動モデル) やARCH(Autoregressive Conditional Heteroskedasticity; 自己回帰条件付分散不均一)型モデルによりリスク資産の実証分析を行っています。

現代の経済政策へのご見解や、それが社会に与える影響についてお聞かせください。

経済政策に関して専門ではありませんので、素人の意見となります。個人的な見解としては、日本政府は、色々と経済政策を行ないすぎるのでないかと思います。また、ある特定の業界を守るための規制が強すぎると考えます。また、経済政策を行なうならば、政策効果を厳密に行ない、説明・開示すべきであると考えます。

新NISAに関しては、どうしてリスク資産の投資に関して税制優遇措置があるのかよくわかりません。例外なく食料品には消費税がしっかりかかるのにです。税制優遇措置の対象を間違えていませんかと疑問を感じます。人は食べなければ死にますが、株式投資をしなくても死にはしません。

経済学を学ぶ学生への助言や、彼らが注意すべき点についてお話しいただけますでしょうか。

ミクロ経済学とマクロ経済学をしっかりと学んで下さい。経済学を学ぶ上での基礎・土台となります。その後、国際経済学、財政、金融など勉強する際にも非常に有益となります。ファイナンス理論や証券分析を行なう上でも、ミクロ・マクロ経済学が基本となっています。学生は、この辺のところを誤解している方が多く、伸び悩みます。また、経済学は実証研究と表裏一体的な側面もありますので、統計学・計量経済学はどの分野を専攻するにしろ、しっかりと学んでおきましょう。

次世代の経済学者を育成するための貴教授のアプローチや教育哲学についてお聞かせください。

勉強も大切ですが、日本の教育では、レポートや論文の書き方を教える機会が少なすぎると思います。専門の授業でレポートを課しても、まともなレポートを提出してくる学生は皆無なので、仕方なく授業内で最低限のレポートの書き方のルールを教えています。大学院でも、

授業内で論文の書き方のルールやコツを適宜教えるようにしています。研究ノートも必ず書くように指導しています。日本の経済・経営系の大学院で研究ノート・ラボノートの書き方を指導しているところはほとんどありません。研究を効率的に進める上で非常に重要なことであると考えています。

国内外の経済の将来に対する 三井秀俊教授の予測や希望についてお伺いします。

日本経済はまだまだ強いと考えています。もちろん、高度成長期のような経済成長はないと思いますが、悲観的になる必要はありません。

特に、日経平均に選ばれているような日本を代表する企業はまだまだ成長するのではないでしょうか。私はよく、大学の授業やゼミで学生に次のような質問をします。「もし、あなたが日本人ではなく、どこかの外国籍でお金持ちだとしたら、どこの国の株式を購入しますか?」と。日本経済の将来を心配する必要はありません。

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