埼玉大学経済学部 長田健教授

今回の取材では、埼玉大学経済学部の長田健教授に深く掘り下げたお話を伺いました。

一橋大学商学部、商学研究科で学んだ後、幅広い学術的背景と豊富な実務経験を持つ長田教授は、特に銀行論を中心に金融論の分野で顕著な活動を展開しています。日本のみならず、オーストラリア国立大学や国際通貨基金での研究滞在を経て、現在はシンガポール国立大学ビジネススクールの客員教授としても活躍中です。長田教授の金融論における深い洞察と、銀行の機能や役割に関する研究は、経済学界における重要な課題に新たな光を当てています。

インタビューを受けていただいた人

国立大学法人埼玉大学 長田健教授

1980年山梨県生まれ。2004年一橋大学商学部卒業。2011年商学博士(一橋大学)。
2008年日本学術振興会特別研究員(DC2・PD)。2010年一橋大学商学研究科特任講師。
2011年西武文理大学サービス経営学部専任講師。
2015年埼玉大学人文社会科学研究科・経済学部准教授、2022年同教授、現在に至る。
この間、オーストラリア国立大学クロフォード経済政府研究所、国際通貨基金(IMF)で客員研究員を務める。
2023年からシンガポール国立大学客員教授。専門分野は銀行論。

目次

自己紹介をお願いします

金融論の研究者であり教育者です。現在は国立大学法人埼玉大学の教授として、経済学部と大学院(人文社会科学研究科)で金融論を教えています。
一橋大学商学部、商学研究科(現在の経営管理研究科)で学んだ後に、日本学術振興会 特別研究員、一橋大学商学研究科特任講師、西武文理大学(埼玉県狭山市)サービス経営学部専任講師を経て、2015年に埼玉大学経済学部准教授として着任し、2022年から教授になりました。

非常勤講師としては色々な大学でこれまでお世話になってきました(跡見学園女子大学、国立音楽大学、実践女子大学、中央大学、東京大学、一橋大学、法政大学、明治学院大学)。客員研究員として海外の大学や機関にもお世話になっています。これまでオーストラリア国立大学(豪州、キャンベラ)のクロフォード公共政策大学院には1年半、国際通貨基金(米国、ワシントンDC)のICD Departmentには1か月強滞在したことがあります。現在もシンガポール国立大学ビジネススクールの客員教授としてシンガポールに約1年滞在しています。

専門分野について教えてください

私の専門は金融論の中の「銀行論(Banking)」と呼ばれる分野です。経済・社会における銀行の機能や役割を研究しています。金融論はMonetary Economics(金融政策論など)とFinancial Economics(企業金融論など)に大別できるのですが、Bankingはどちらにも関係する分野なので、銀行業の分析を軸に色々なテーマの議論を行える(例えば、ビジネス的な議論も政策的な議論も行える)ことが魅力です。

実際、私のキャリア(商学部→経営学部→経済学部)や、海外での所属(公共政策大学院・国際機関・ビジネススクール)を可能にしたのはBankingの研究者だからだと思います。

最近の研究テーマ及びその背景について

日本のバブル崩壊や、世界金融危機(リーマンショック)などの例から分かるように、銀行業の不具合は経済全体に悪影響を与えます。日本の銀行業の不具合の原因は何なのか、今後再び銀行業が不具合を起こすことは無いのか、データを使って分析しています。

前者の例としては、銀行内部(取締役会のメンバー)の個人的な繋がり(学閥など)が影響しているのではないかという仮説のもと研究をしています。

後者の例としては、非伝統的金融緩和政策の出口の影響を分析しています。昨年、米国でシリコン・バレー・バンクが破綻しましたが、同様のことが日本でも起こりうるのかどうかを検証する研究です。

研究活動における挑戦と成果に関して

私が大学生だった頃、バブル崩壊から10年が経ち、日本経済の「失われた10年」という言葉が関心を集めていました。しかし、その後、「失われた」期間は20年を過ぎ、最近では30年が過ぎたのではないかとも言われています。

「失われた10年」の原因の1つに銀行業の行動(融資行動など)があると言われていたことから、そのメカニズムの一端の解明をしたいと思い研究者の道に進みました。バーゼル規制(自己資本比率規制)の副作用についての研究は成果の1つかなと思っています。しかし、日本経済が失われた40年目に突入したとも言われる現状からして、まだまだ道半ばで、研究課題は山積されていると思います。

教育活動における長田健教授の哲学と目標について


「経済学は人々を幸せにするためにどうすれば良いか一生懸命考える学問だ」という考え方が好きです。研究・教育を通じて教え子たちが幸せになり、同時に社会全体も幸せになると良いなと思っています。

社会(社会科学)は自然(自然科学)と同様、非常に複雑で未解明なことが沢山あります。人々の幸せ実現に向けた解決策を考えることは私一人では当然出来ませんが、多くの学生さんたちと共に学びあう中でそれに一歩でも近づけるのではないかなと思っています

最後に学生へ向けたメッセージをお願いします

現在私には大きく3つのグループの学生さんがいます。20歳前後の大学生(いわゆる一般的な大学生)、30歳前後の海外からの留学生(大学院生)そして30~60代の社会人大学院生です。どの学生さん達との議論も私にとっては楽しく知的好奇心を刺激するものです。

金融論に限ったことではないですが、学びはちょっとしたきっかけで始まるものですし、始めるのに早いも遅いもないと思います。私自身、高校生の頃は自分自身が金融論の研究者になるとは微塵も想像していませんでしたし、大学1₋2年生の頃はやりたいことが見つからず遊んでばかりいましたが、ちょっとしたきっかけで研究者の道に進むことになりました。

このインタビューを読まれて、金融論や経済学に少しでも興味が出た方は、金融論のテキストや学術書を手に取ってみて下さい。一緒に人々の幸せについて考え学んでくださる方、大募集です。

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この記事を書いた人

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